先日、NHK-BSプレミアム「ザ少年倶楽部」の中で、Sexy Zoneの中島健人君が「永遠のメリーゴーランド」(完成版)という曲をピアノの弾き語りで歌いました。

長らくこの曲について語ることは避けてきました(笑)
が、完成版が色々な所で披露され、クレジットも出てしまい(笑)、すこしこの曲について書いてみます。

この曲は、元々2013年7月から9月まで放送した、日本テレビの深夜番組「JMK 中島健人ラブホリ王子様」という番組の中の一曲で、私はそのドラマ中の音楽を担当していました。
「ドラマ中」といっても、番組の内容は、視聴者が健人君とバーチャルデートを楽しむという趣旨のもので、通常のドラマに比べ、発注曲数は少ないものでした。

が、曲リストの中に、「最も重要な曲」があり、それは
「健人君が彼女の部屋に遊びに行き、二人きりの部屋で、彼女にピアノ弾き語りのオリジナルソングをプレゼントする」
というものでした。

実はワタクシ、タレントや歌手に向けての曲提供というのがあまりなく、正直、健人くんも制作サイドも視聴者も納得するベストマッチな曲ができるのか、という不安がありました。

実はこの番組以前のクールで、同じく中島健人君主演の「Bad Boys J」その他日テレJ枠のドラマの音楽を沢山担当させて頂いていたのですが、あくまでも自分の役割は「劇伴」

主題歌や挿入歌といった歌モノは、事務所やレコード会社が沢山持っている曲の中から選んで決定するので、基本それにはノータッチなのです。

が、この曲に関してはワタクシが曲を書き、健人くんが歌詞を書くことになっており、そのやり方で各方面OKも出たということで、引き受けました。

まあ、使う場面が極所的だし、既に1話は出来ていて、弾き語りの回の撮影までに時間もなかったので、
書かせた方が早い、と判断したのかも知れません。

1.提示された参考曲に添って、ピアノの4つ打ちを基調にし、歌い上げるバラード系メロディの曲
2.参考曲には添ってないが、この曲を歌うシチュエーションを想像し、アルペジオ主体で、小さな部屋で語りかけるようなシンプルなメロディの曲 ← こっちが推し

の2曲を作り、監督や制作サイドに提案しました。

結果、推しの2が選ばれました。こういう時は嬉しいですねー(笑)

当時健人くんにはまだソロ曲がなく、こんな1シーンのための小さな曲を「初めてのソロ曲」と言って大変喜んでくれまして、ワタクシはほっと胸を撫で下ろしました。

譜面上でのキーはC# #7つ

ピアノ弾き語りの名曲を色々思い返したところ、

Let it Be=C 調号無し
Hey Jude=F ♭1個
Piano Man=C 調号無し
Your Song=E ♯4個
Overjoyed=E♭ ♭3個
Don't know why=B♭ ♭2個
卒業=A ♯3個

ピアノだけでなく、歌わなければならない、踊らなければならないアイドル健人君に対し、
世の弾き語り名曲の中でもダントツに弾きにくいキーを与えることになってしまいましたが、
このキーの持つ柔らかく夢心地なイメージと、
サビの良い所で、一瞬のファルセットを気持ちよく聴かせたい、という意図があり、
上にも下にも動かせなくなってしまいました(笑)
(ちなみに没になったもう一曲も同じキーでしたw)

番組では、健人君が彼女の部屋に遊びに行く場面、健人君の部屋に招かれ、誕生日をお祝いしてもらう場面、撮影現場でアカペラで歌う場面、で歌われ、「永遠のメリーゴーランド」というタイトルがつきました。

いずれも、Aメロだけ、Aメロ+サビ サビだけ、のショートバージョンで演奏されていました。

その後、コンサート等でもショートバージョンで歌ってくれていましたが、ある時、フルでやりたいからフルの譜面も欲しい、と事務所から連絡がありました。

そして先日、番組で日の目を見なかった箇所に歌詞が付き、完成版として披露されました。

内容的には、最初に提出したデモと同じ状態で歌われたわけですが、そうとは思えないぐらい繊細で、ロマンチックな歌に仕上げてくれました。
(ワタクシの手クセまみれの譜面を、所々健人くん自身のフィーリングは入るものの、和音、テンション等は1音たりとも簡略化せず、意図を汲み取りながら弾いてくれているのが良くわかりました)

実は私自身、この「JMK」以降、手がけることになるドラマや映画作品で「あのラブホリの時みたいに」と、劇伴と一緒に歌モノも書く機会が増えました。

劇伴作家が、挿入歌やその他歌モノを書くことは珍しくはないのですが、そう多くもありません。
それはこの「永遠のメリーゴーランド」が引き出してくれたのかもしれません。


今となっては、手持ちにもっと素敵なソロ曲、弾き語り曲がたくさんあるにもかかわらず、2年前の一深夜番組で生まれたこの小さな曲を、きちんと完成させ、局を超えて、日の当たる場所へ持っていってくれた健人君、そして、それを受け入れて下さったファンの皆様には感謝したいと思います。